ビクラム歴だけじゃない-ネパールの暦は実は3種類あった!?
西暦2019年の5月1日から日本の暦は「令和」になりました。今までずっと平成と西暦が一覧表がないと分からなかったのに、さらにややこしくなりましたね。
ネパールにも、独自の暦があります。そう、それは「ネパール歴」です。
ビクラム歴じゃないのか?と思われる方もおられるかもしれませんが、違っていませんけど違います。ややこしいので、順を追って説明しましょう。
ネパールのカレンダーを元にみる暦
ネパールで一般的に使われている暦はビクラム歴(ヴィクラム歴)と言います。
ネパールに旅行に行くと、お店や部屋にこんなポスターがたくさん貼ってあるのを目にします。これはネパールのカレンダーです。
写真のものは西暦2019年11月17日から12月16日までのカレンダーです。
ものすごい微妙な日割りですが、これがネパールのカレンダーです。
この写真は分かりやすいように日本人が使うカレンダーと同じ横並びのものです。しかし、ネパールの一般的なカレンダーは左上から右下に向かって数字が並ぶ、縦並びのカレンダーです。
一日分のマスに数字が二つ書いてありますが、大きな数字がネパールの暦(ビクラム歴)の日付で、小さい数字が西暦の日付です。
そうなんです、ネパールでは月も西暦とは異なります。なので、ネパール人は毎日二つの暦を使い分けています。ネパール人はね。。。
でも、ネワール族はちょっと違う。どういうことか、ネパールで使用される暦を詳しく説明します。
ネパールで使用されている3種類の暦
ネパールでは一般には使用されていない、公式の暦が存在します。それを含めると、ネパールには三種類の暦が存在することになります。
そして、そのすべてが年号、月が異なります。それぞれが何に使われるのかを順に説明します。
ビクラム歴(ビクラム・サンバット)
ビクラム歴は、ネパールで一般的に使われている暦です。普段の会話で最初に口に上るのはこの暦ですし、カレンダーもこれを主に表記されています。
ネパール語でビクラム歴は、ビクラム・サンバットといいます。表記する時は「B.S.」です。
実際に一般的に使用されているし、政府で使用されているのもこの暦です。ですから、ネパールの公式の暦として知られています。
この記事を書いているA.D.2019年11月28日は、ビクラム歴ではB.S.2076年8月12日です。ちなみに、月はネパールでの言い方で表現するのでMangsir(マンシール)の月です。
ビクラム歴 | 発音 | 期間 |
वैशाख | baishakh | 4月半ば~5月半ば |
जेठ | jeth | 5月半ば~6月半ば |
असार | asaar | 6月半ば~7月半ば |
साउन | saaun | 7月半ば~8月半ば |
भदौ | bhadau | 8月半ば~9月半ば |
असोज | asoj | 9月半ば~10月半ば |
कात्तिक | kaattik | 10月半ば~11月半ば |
मंसीर | mansiir | 11月半ば~12月半ば |
पुस | pus | 12月半ば~1月半ば |
माघ | maagh | 1月半ば~2月半ば |
फागुन | phaagun | 2月半ば~3月半ば |
चैत | chait | 3月半ば~4月半ば |
この暦はインドで主に使用されていますが、サンスクリット語圏では他にも利用している国もあるようです。ネパールは最近できた国なので、インド属国として同じこの暦を使用しているということになります。
昔は太陰太陽暦でしたが、 当時のネパール王国の宰相チャンドラ・シャムシェルがB.S.1961年の新年(西暦1904年4月)より、太陽暦のビクラム暦を公式の暦として用い始めたとされています。そのため、現在のネパールのビクラム歴は太陽暦です。
B.S.2076年の1月(Baishakh-バイサック)1日は、A.D.2019年4月14日です。ですから、年号は57年、月は4カ月半くらいズレていることになります。
月のズレは約半月なので、西暦の月の半ばにビクラム歴の新しい月が始まるという感じです。ビクラム歴の新年は西暦の4月半ばです。
現在のビクラム歴ではひと月の日数は29日から32日あります。月によって異なります。
毎年、新年になる少し前に来年のカレンダーを政府が決めて公開するので、来年の暦は来年にならないと分かりません。
西暦(イスビ・サンバット)
西暦は日本でも使われる、グレゴリオ暦ですね。歴史を調べると実際にイエス・キリストが生まれた年とは1年3カ月ズレていますが、イエスが生まれた年を元にしたと言われています。
そのため、ネパール語では「イエスの暦」を意味する「イスビ・サンバット」と言われています。
一般的には「イングリッシュ・カレンダー」と言われています。海外(英語圏)で使われる暦という事ですね。
外国人はこの西暦を使いますが、最近は商売でも使われるようになっています。お店の領収書は大抵ビクラム歴で書かれてしまうのですが、銀行や政府系の書類は最近は西暦になっています。
まぁ、パスポートとか海外向けの書類に独自の日付を書いても意味わかりませんよね。。。
ネパール歴(ネパール・サンバット)
ネパール歴とは、国連に登録されているネパールの公式の暦の事です。
ネパール語では「ネパール・サンバット」といいます。表記する時は「N.S.」です。
ネワール人に言わせると、これが古くからの本来の暦だとか。彼らはネパール中でみんな知っていると言いますが、ネワール人が祭りの時に使っている以外見たことがありません。
この記事を書いているA.D.2019年11月28日は、ネパール歴ではN.S.1140年2月2日です。ちなみに、月もビクラム歴と違った表記があり、今月はThinlaathwa(ティンラトゥワ)の月です。
このネパール歴は、太陰暦の様で14日ごとに日の名前が決まっていて、新月、満月などもあります。しかし、何年はみんな知っていても、何月何日かは表を見ないと分からないようです。
実は「ネパール・サンバット」という言葉の意味は、ネワール語で「ネワールの暦」です。というか、ネパールという国名すらも、ネワール語で「ネワールの国」という意味なのです。
一体どういうことかというと、ネパールはもともと小国の集まりです。そして、ゴルカ王朝のプリティビ・ナラヤン・サハという王様がカトマンズ盆地にある複数のネワールの王国とその周辺を一つに統一しました。それが、ネパール王国の元になります。
現在のネパールを仕切っているのはインド系民族なのですが、もともと住んでいたのはネワール族。そして、ネパールの世界遺産もネワールの寺院や王宮です。
というのも、国連にネパールを登録する時に、独自の文化や言語、文字、暦を提出する必要があったのだとか。その時、ネパール語の文字もビクラム歴もインドの物だから認められないと言われ、仕方なくネパール歴、ネワール語の文字を登録したようです。
それで、現在に至っても対外的にはネパール歴が公式なものという事ができます。
ちなみに、上のネパール歴の新年を祝う写真の文字一番上に書いてあるのがネワール語の文字です。ヒンズー教のお寺(マンディール)にも各所に書いてあります。
左側がマンディールの写真で、左上をズームしたものが右側です。
一番上がネワール語、真ん中がネパール語(デバナガリ文字)、一番下が英語で発音を書いています。
ネワール語は文字としては存在していても、基本的に会話の実の言語です。読み書きできる人はほとんどいません。そのため、現在国立大学で文化が無くなってしまわないように、再び研究している最中だそうです。
ビクラム歴と西暦の暦のズレ
ネパール人であれば、今日の日付を聞いたら、ビクラム歴と西暦の両方で答えられます。
全部覚えているわけでなくて、ビクラム歴で覚えていて、西暦は新聞やスマホのアプリに書いてあるので、その日一度見れば覚えられるそうです。
しかし、面倒なことが一つあります。ビクラム歴のところで書いたように、新年が近づくまで 来年の ビクラム歴の暦は分かりません。
ネパール人は誕生日をビクラム歴で覚えているので、携帯などのカレンダーに登録することができません。ビクラム歴にはうるう年がないので、西暦と比べると毎年ズレるからです。
でも、どこかで調整していると思うんですが、いったいどうやって行っているのか。
ネパールでは新年はどのように扱うか
ネパールでは新年が何度もやってきます。
西暦、ビクラム歴、ネパール歴だけではありません。そのほかにも、他の民族の独自のカレンダーがあり、暦が異なるので新年が他にも存在するのです。
そのため、人(民族)によって新年が異なるので、元旦に何かを祝うという習慣はあまりありません。
商売をする人は、それに合わせてセールを行ったりしますが、大きく祝ったり休みになることはありません。
それよりも、ダサインやティハールのようなヒンズー教のお祭りの方が大事なようです。それに合わせて、海外からネパール人が帰省するほどですからね。
ネパールに旅行で来られてレシートや領収証をもらった際は、日付がビクラム歴になっていることがあります。日本の仕事で精算の必要がある場合は、その都度確認して西暦を書き留めておくと後で困りません。
日本は単一民族ですが、多民族国家は統一するために色々な問題がありますね。ネパール国内の言語も100を超えると言いますが、暦は本当にややこしいです。
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