ブラック企業!?-ネパールの就職状況

ブラック企業!?-ネパールの就職状況

日本では就職難が騒がれており、企業によってはもう新卒を雇わないとか。エスカレーター式ではなく、個人で頑張る時代が来ているのでしょうか?

ネパールでも例にもれず、就職難と言われています。一体どんな状況なのか?アジアの極貧国ネパールの若い学生たちに明るい未来はあるのか?

ネパールでの就職が厳しいと言われる裏に潜む文化的背景や、現地の雇い手、就職活動生の聞き取りを行い分析してみました。

ネパールの文化的背景

ネパールは観光する場所はあっても、外国に売れる天然資源はありません。また、中国とインドに挟まれた陸の孤島なので、国外との取引や輸送となるとどうしても隣国に頼らざるを得ません。

そのような環境もあって、現金は手に入らないのに、物価が高騰しやすい構造になっています。

また、隣国インドがカースト制度を法律上廃止したこともあって、ネパールでもカーストや部族による差別は良くないという見方があります。

しかし、現状政治はネパール語を母語とする民族のバフンやチェットリなどに仕切られています。そして、商売はネワール族、体力仕事や汚い仕事はマデシと言われるインド系の人が行っています。

その他の山岳民族の人はお金持ちや外国人のビジネスの下請けのような仕事をするか、利益の少ない小売業、農業をするしかありません。彼らにカトマンズなどの都市部の土地や持ち家はありません。

そして、それら政治や商売の大半は利権が絡んがくるので、自分たちが利益を得て、他の人に奪われないように囲い込むことで生計を立てています。

そのため、賄賂と口利きでネパールの世界は回っています。

若者たちの間に見られる教育と貧富の差

ネパールでは小さい時から教育を施すのが昨今の流行になっています。ネパールの教育は早く、学校に入る前の2歳から学びに出すことが一般的になっています。

  • Nursery – 2歳
  • LKG(Lower Kinder Garden) – 3歳
  • UKG(Upper Kinder Garden) – 4歳

これらは日本では保育園と幼稚園に相当しますが、ここで英語をしっかりと叩き込みます。

そして、5歳から始まる10年間の学校教育(SeconderySchool)を経てSEE(Secondary Education Examination)という試験をパスします。その後、プラスツーと言われるカレッジで2年勉強してSLC(School Leaving Certification)という試験をパスします。

これで、やっと基礎教育が終わります。ここまで学んでなければ、会社などオフィスの仕事ではまず雇ってもらえません。

その後、バッチュラー(4年制大学)か、マスター(6年生大学院)を勉強して、やっと就職する時期にたどり着きます。

しかし、サルカリ(公立)プライベート(私立)では大きな違いがあります。

公立では、授業料が無料に近かったりしますが、先生の質が悪くまともに学べない人も多いです。英語以外の科目は基本ネパール語で行われます。(最近は一部英語教育にシフトしつつある)また、建物は一般の家を改造したものであったり、教室に窓やドアがない場合もあります。

私立では、授業料が月額5千ルピーから2万ルピーを超えるものなど幅があり、先生の質も良く、ネパール語以外のすべての科目は英語で行われます。建物も施設も高品質なものが使われます。

ちなみに、一般人の月収は1万ルピーあれば良い方です。そのため、多くの人は借金するなどして子供を学校に入れます。

私立に通っている場合は、追加のクラスなどもあり、飛び級もよくあります。公立に通っている場合は、勉強ができなくて、途中で学校をやめてしまうこともあります。

どこで教育を受けるかが子供たちの未来を大きく分けてしまいます。

教育は就職に役に立っているのか?

ネパールの若者たちを見ると、私立のきれいな制服を着て、街中で友人たちと楽しそうに話しながら歩いていたり、iPhoneXを手に電話していたり、最新のKTMの200ccのバイクを乗り回したりしています。

実は彼らは金持ちの御曹司たちです。そうでない人たちは、路地に入った先の家やパサルの前でたむろして、1本10円のたばこを回し吸い(シェア)しています。また、そうした若者の多くは私服です。学校に行っていないか、親のすねをかじって生活しています。

ここで、すでに貧富の差がかなり出てしまっているのですが、それはあまり関係ありません。

「4年制大学を出た」、「ホテルマネージメントを学んだ」、「ビジネスマネージメントを学んだ」などという人を良く見かけます。でも、大抵は家で仕事もせずにボーっと暮らしていたり、チヤパサルでおじさんと賭けゲームをしています。

ネパールでは、どんなに良い大学を出ても、どれだけ勉強ができても、どれだけ働きたくても、簡単に就職はできません。多分、東大に入学するより難しいです。

もちろん、医者になる、弁護士になるなどであれば、インターンで働けたりします。しかし、実際に就職できるかというとそうではありません。

ネパールで就職するための方法

ネパールで就職するために必要なものは、以下の三つです。

  • コネ(知人の紹介)
  • お金(袖の下)

どれかが秀でていれば、比較的簡単に就職できます。逆に、それらがなければ基本的に就職はできません。

そのため、多くの人は実家の仕事を継ぐか、親のすねをかじりながらひもじい生活をすることになります。

お店や会社を回って「私を雇ってください」とアピールしても、普通は仕事はもらえません。それよりも、お金持ちか顔の広い人を探して仕事を紹介してもらう方が圧倒的に早いです。

実際、働き手を探している雇い主は多いのですが、多くの人が根性がなく数日でやめたり、いきなり来なくなったり、店のお金や物を盗って逃げたりします。そのため、信頼できる人の口利きでなければ、働かせたくないのが現状です。

ブラック企業よりひどい一般的な月収と物価

ネパールでの一般的な月収は1万ルピー前後です。公務員や学校の先生などの初任給が1万ルピーぐらいです。というのは、法律上企業が社員に払わなければいけない最低賃金が決まっていて、2017年の段階で9700ルピーとなっています。

しかし、雇用契約を行わない仕事の方が一般的です。手に入りやすい仕事であるレストランのウェイターやパサル(お店)の店番はさらに安く、7000ルピー程度になります。

実際、私の友人がレストランを経営していますが、そこのウェイターの給料はひと月7000ルピーです。もちろん、ダサインの時期には休みを取れますし、通常ひと月分ボーナスが支払われたり、田舎に帰るためのお金が支払われたりします。

これはネパールでは一般的です。しかし、拘束時間と物価を考えるとかなり安いです。

例に挙げたレストランは1日11時間拘束で、週休1日です。そうなると、月換算280時間となり、時給は25ルピーです。ただし、ご飯は食べ放題です。

他にも、美容院の店番で1日9時間拘束で週休1日の場合を考えましょう。そうなると、月換算230時間となり、時給30ルピーです。

モノの値段を考えてみましょう。約50mlのチヤ(ミルクティー)が一杯25ルピーで、ドーナツが一個10ルピーです。バルバート(肉無し)は、平均120ルピーくらいです。家賃は4m×4mの部屋で4000ルピーから7000ルピーくらいです。お店に通うのにマイクロに1回乗ると20ルピーです。

部屋を借りて、1日1チヤ、1ドーナツ、2ダルバート、それに仕事にマイクロで往復2回乗るとどうなるでしょうか。合計16,250ルピーです。

ワーキングプア決定ですね。

ですから、ネパールでは一部屋にキッチンを作り自炊して、ベッドも二つくらい置いて、2人から7人で身を寄せて共同生活をします。でなければ、携帯代も払えないし、電気代も払えません。子供を学校に通わせるなんてもってのほかです。

そうなると、家族全員で働くか、家や土地を売ってお金を作らない限り、ネパールでは貧困層確定です。

ネパール全土がブラック企業のかたまりですね。

ネパールであるゆえの難しさ

こんな意見があるかもしれません。

「今はインターネットがあるから、ブログでもYouTuubeでも始めればいいよ。」「インターネットで働けるから、ネットで仕事を探せばいいよ」

そう簡単にはいきません。

ネパールではGoogleのパートナープログラムが適用されていませんので、ネパールでYouTubeチャンネルを開設しても、大量のアクセスがあっても収益に全く関係がありません。

また、PayPalをはじめオンライン支払の会社は軒並み、ネパール非対応です。ネパールのクレジットカードにはVisaがありますが、発行がとても難しいです。発行しても、ネパールとインド以外では使うことはできません。ですから、オンラインで海外の支払いに使うことはできません。

ネパールの銀行では、海外に行くためのパスポートと有効なビザが発行されていなければ、ネパール人はお金を外貨に換えることを許可されていません

なぜなら、ネパールという国自体に信用がないから。そして、国自体も国民を信用していないという始末。

ネパールの若者に残された選択肢

ネパールでは、頭をうまく使って、口利きをできる人でなければ生きていくことができません。そうでなければ、住み込みでタダ働きを続けるか、飢え死にするしかありません。あとは、外国人を見つけて騙して結婚する事でしょうか。

田舎から出ずに、一生畑仕事か牧畜をするという方法もあるにはあります。

それはさておき、現実的にネパールの若者がお金を稼ぐ手段はあるのでしょうか?

恐らく、以下の手段しかありません。

  • 海外で働ける斡旋業者を頼って、借金して海外で働く
  • 借金して海外に留学して、隠れて働く
  • 自分でビジネスを始める
  • EDVに応募してアメリカ永住権が当たるのを待つ

最初の二つは、借金をしなければいけませんし、かなりのリスクを伴います。とはいえ、確実にお金を稼げる方法です。そのためにも、最低大学教育は終えている必要があります。

自分でビジネスを始めるには、アイデアとセンス、そして元手がなければできません。これは賭けみたいなもので、多くの人は借金をして自分で店を開きますが、商売がうまくいかず店ごと売る羽目になっています。

EDVは、日本と違ってネパールからは毎年4000人近く当選しています。応募数が多いので0.3パーセントくらいの確率ではありますが、夢があります。ちなみに、こちらも大学を出ていないとネパールでは受け入れられないのがつらい所。

ということで、お金持ちに生まれなければ、ネパールではかなりの確率で貧困層確定となります。

残念なことに、ネパール人に生まれたら人生詰むというこの仕組みがあるように思えてなりません。日本人の皆様、ぜひネパールに旅行に来て観光業界を盛り上げて、少しでもお金を落としていただければと思います。